養生訓69(巻第二総論下)
千金方(せんきんほう)に曰、養生の道、「久しく行き、久しく坐し、久しく臥し、久しく視(み)る」ことなかれ。
酒食の気、いまだ消化せざる内に臥してねぶれば、必(かならず)酒食とゞこほり、気ふさがりて病となる。
いましむべし。昼は必(ず)臥すべからず。大(だい)に元気をそこなふ。もし大につかれたらば、うしろによりかゝりてねぶるべし。
もし臥(ふ)さば、かたはらに人をおきて、少ねぶるべし。久しくねぶらば、人によびさまさしむべし。
意訳
古い医学書にも、同じ姿勢を長く続けるのは良くないと書いてあります。
お酒が入る夕食も、すぐに寝るのはいけません。お昼寝も短い時間が良いです。
誰かに起こしてもらいましょう。
通解
『千金方』には、「養生の道は、久しく歩き、久しく座り、久しく横になり、久しく見ることを避けなさい。食事の気がまだ消化されていない状態で横になって寝れば、必ず食事が消化されずに残り、気が滞り病気になる。注意が必要です。昼間は絶対に横になるべきではありません。これは元気を大きく損ないます。もし大きな疲労を感じる場合、後ろに寄りかかって横になりましょう。横になる際には、体の横に他の人を寝かせて少しだけ横になること。長時間横になる場合、他の人に呼びかけて起こしてもらうべきです。」と書かれています。
気づき
同じ姿勢で長くいると、しびれが来たりしますが、これって、やっぱり、血行が悪くなっているのですかね。
座りっぱなしは、けっこう、血行が悪くなるのかも知れません。
「千金方」(せんきんほう)とは
「千金方」(せんきんほう)は、中国の古典医学文献の一つで、医薬に関する情報や処方について詳細に記された医学書です。この文献は中国の伝統的な医学や漢方薬の基礎を提供し、様々な病気や症状に対する治療法や処方を含んでいます。
「千金方」の著者は、中国の医学者である孫思邈(そんしばく)で7世紀頃に活躍しました。この書は、孫思邈の経験や知識に基づいて、当時の医療知識や治療法をまとめたもので、特に漢方薬に関する情報が多く含まれています。
「千金方」は、病気の原因や症状、診断、治療法、薬物療法、食事療法などについてのガイドラインを提供し、漢方薬による治療法が中心です。この書は、古代中国の医療の発展に寄与し、多くの後代の医学書や漢方薬の文献の基礎となりました。また、中国の伝統医学や漢方薬の理解においても重要な文献として位置づけられています。
「千金方」の名前は、「千金の価値があるほどの貴重な情報や知識を持っている」という意味を表現しています。この文献は、古代から現代まで、中国の医学と漢方薬に関する研究と実践に影響を与えています。