養生訓67(巻第二総論下)
家に居て、時々わが体力の辛苦(しんく) せざる程の労動をなすべし。吾(わが) 起居(ききょ)のいたつがはしきをくるしまず、室中(へやなか) の事、奴婢(ぬひ)をつかはずして、しばしばみづからたちて我身を運用すべし。
わが身を運用すれば、おもひのままにして速(しみやか)に事(こと) 調(ととのい)ひ、下部(しもべ)をつかふに心を労せず。
是「清心省事」(せいしんしょうじ)の益あり。
かくのごとくにして、常に身を労動すれば気血めぐり、食気とどこほらず、是養生の要術(ようじつ)也(なり)。
身をつねに、やすめおこたるべからず。
我に相応(そうおう)せる事をつとめて、手足を、はたらかすべし。
時にうごき、時に静(せい)なれば、気めぐりて滞らず。静に過(すぎ)ればふさがる。動に過(すぎ)ればつかる。動にも静にも久しかるべからず。
意訳
家の中でも家事などで運動をしましょう。立ったり座ったりでもいいです。人に任せず、自分でしましょう。血行が良くなります。でも、動きすぎも良くありません。
通解
家にいるときでも、定期的に身体に辛苦を与えない程度の労働を行うべきです。自分の生活が困難でないように心がけ家の中でのことは使用人を使わず自分で立ち上がって身体を動かすことが重要です。
自分自身を動かすことで、自分の思い通りに速やかに事を整え、使用人を雇わなくても労働の心配をせずに済みます。これが「清心省事」の益になります。このように常に身体を動かすことで気血がめぐり、食気も滞りません。ただし、身体を常に休めることも大切です。
自分に適したことを心がけ、手足を動かして働くことが必要です。時には動き、時には静かでいることで、気のめぐりが滞ることなく保たれます。あまりにも長く動き続けたり長時間静かに過ごすことは避けるべきです。
気づき
運動をしないのも、しすぎも良くないようですね。 このバランスが、難しいですよね。
「清心省事」とは
「清心省事」は、中国語の表現で、日本語においては「心を清らかにし、余計なことを省く」といった意味を持つ表現です。このフレーズは、心を平静に保ち、物事を単純化し、不要なストレスや心配事を取り除くことの重要性を表現しています。
日常生活において、余計なことを考えずにシンプルに物事を進めることが、ストレスを軽減し、精神的な平和をもたらすとされています。