養生訓60(巻第一総論上)
「聖人(せいじん)は未病(みびょう)を治すとは、病(やまい) いまだおこらざる時、かねてつつしめば病なく、もし飲食・色欲などの内慾をこらえず、風寒暑湿(ふうかんしょしつ) の外邪(がいじゃ) をふせがざれば、其(その)おかす事はすこしなれども、後に病を、なす事は大(だい)にして久(ひさ)し。
内慾と外邪をつつしまざるによりて、大病(たいびょう)となりて、思ひの外にふかき、うれひにしづみ、久しく苦しむは、病のならひなり。
意訳
中国の故事に、「名医は、病気になる前に、病気を治す。」と云われています。病気の前兆を感じとり、
早めの予防と対策を行うことで重篤化させないのが名医だといえます。生活習慣の改善が、大病を予防します。
通解
聖人たちは未病を治す方法を知っています。それは、まだ病気が発症する前に、事前に注意深く身を守ることです。もし病気がまだ起こっていない段階で適切な予防措置を取れば病気を防ぐことができます。
また、飲食や色欲などの内からくる欲望を抑えず外部からの風や寒暑湿気などの邪気を遮らない限り少しの不調は起こるかもしれませんが後に大きな病気になることがあります。
内からくる欲望と外からくる邪気を適切に抑えない限り重篤な病気が発症してしまい心が深く悲しみや苦しみに包まれ長い間苦しむことになります。このように未病を治すためには身体と心のバランスを保ち欲望を抑え、外部からの悪影響を適切に避けることが重要です。
気づき
もしかしたら、本当は自分の中に、名医がいるのかも知れませんね。
「聖人」とは
宗教的な聖人: 多くの宗教(特にキリスト教、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教など)において、聖人は特別な霊的な資質や道徳的な高潔さを持つとされる人物を指します。彼らは神聖な存在と見なされ、信者たちによって崇拝されたり、模範とされたりします。聖人は神秘的な経験や奇跡を経験したと信じられしばしば宗教的な教えや精神的な指導を提供しました。
仏教における聖人: 仏教において聖人は仏陀(釈迦牟尼仏)や菩薩(覚者を目指す存在)など霊的な覚醒を達成した存在を指します。彼らは仏教徒たちによって尊敬され模範とされその教えや修行方法に従うことを奨励されます。