養生訓40(巻第一総論上)
「かけまくも、かたじけなき天照皇大神(あまてらすおおみのかみ)も、みづから神の御服(ごふく)を、おらせ、たまひ、其(その)御妹(みいもと)稚日女尊(わかひるめのみこと)も、斎機殿(いみはたどの)に、ましまして、神の御服(ごふく)を、おらせ給ふ事、日本紀(にほんき)に見えたれば今の婦女(ふじょ)も昔かかる女のわざを、つとむべき事こそ侍(は)べれ。
四民ともに家業をよくつとむるは、皆是、養生の道なり。つとむべき事を、つとめず久しく安坐し、ねぶり臥す事をこのむ。
是(これ)大(おおい)に養生に害あり。かくの如くなれば病おほくして短命なり。戒(いさ)むべし。」
意訳
大昔の書である日本書記にも、貴い方でさえ働いていたと書いてあります。
長く同じ姿勢で過ごしたり寝過ぎは健康に良くないです。
通解
天照皇大神や稚日女尊のような尊い存在であっても、みずから神の御服を整え、手を動かして労働する姿が日本紀に記されています。現代の婦女も、かつてのような女性の姿を見習い家業や家事をよく努めることが養生の道となります。
家族全員が家業に尽力することは、健康を保つために重要なことです。
それに対して何もせずに長時間座っていたり寝ることばかりを好むことは健康に害を及ぼす可能性があります。
そのような生活をしていると、病気にかかりやすく、寿命も短くなってしまいます。これらの点に注意し、努力することを戒めるべきです。