養生訓62

「人の身のわざ多し。その事をつとむるみちを術(じゅつ) と云(いう)。
萬(よろず)のわざ、つとめならふべき術あり。
其術(そのじゅつ)をしらざれば、其(その)事をなしがたし。
其内(そのうち)いたりて小にて、いやしき芸能(げいのう)も、皆(みな)其術をまなばず、其(この)わざをならはざれば、其事をなし得がたし。
たとへば、蓑(みの)をつくり、笠(かさ)をはるは至(いた)りてやすく、いやしき小(しょう)なるわざ也といへども、其術をならはざれば、つくりがたし。」

「いはんや、人の身は天地とならんで三才(さんざい)とす。
かく貴(とう)とき身を養(やしな)ひ、いのちをたもつて長生(ちょうせい)するは、至(いた)りて大事なり。
其術(そのじゅつ)なくんばあるべからず。
其術をまなばず、其事をならはずしては、などかなし得(え)んや」

意訳

世の中には、様々な技術があります。何をするにしてもその技術を学ばなければなりません。
例えば、蓑一つ織るにしても最初に教えてもらわないと織れません。

同じように長生きにも技術があります。この技術を学ぶ必要があります。

通解

人の身にはさまざまなことを成し遂げるための術があります。万能の術があり、それを学ばなければそのことを行うことは難しいでしょう。

身の周りにはさまざまな小さな技能や芸能が存在しますが、それらもすべてその術を学ぶことによって成し遂げられます。たとえば、蓑や笠を作ったりすることは至極簡単なことに見えますが、その術を知らなければ作ることは難しいでしょう。

また、人の身は天地と調和しており、その尊い存在を長寿するためには、適切に身を養い、生命を保つことが非常に重要です。そのためには、その術を学ぶことが必要です。術を学ばずに事を行ったり、そのことを成し遂げることは困難です。ですから、その術を学ぶことなくしてはなりません。その術を学び、そのことを実践することが大切であると言えます。

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