養生訓383(巻第八 養老)
老人、病あらば、先(まず)食(しょく)治(ち)すべし。食治応ぜずして後、薬治を用ゆべし。是、古人の説也。人参(にんじん)、黄芪(おうぎ)は上薬也。虚損(きょそん)の病ある時は用ゆべし。病なき時は、穀肉の養(やしない)の益ある事、参芪(じんぎ)の補に甚(はなはだ)まされり。故に、老人はつねに味(あじ)美(よ)く、性よき食物を少づゝ用て補養すべし。病なきに、偏(へん)なる薬をもちゆべからず。かへつて害あり。
養生訓(意訳)
高齢者が病気の時は、「まず、食をもって治した方が良いでしょう。それでも、治らない時は薬を用いましょう」。と昔の人は言っています。
通解
老人が病気の場合は、まず食事による治療を優先すべきです。食事療法が効果がない場合には、その後に薬物治療を考えるべきです。これは古代の人々の教えです。人参や黄芪は上質な薬とされています。虚弱な状態の病気がある場合には、これらを使用することが適切です。病気のない時には、穀物と肉のバランスの取れた食事が健康に役立つことが分かっています。したがって、老人は常に味の良く、栄養価の高い食材を適量摂取して補充すべきです。健康な時には、過度な薬物摂取は避けるべきです。逆に害をもたらす可能性があります。