養生訓352(巻第七 用薬)
又曰(またいわく)、薬を煎(せん)ずるに砂罐(しゃかん)を用(もち) ゆべし。やきものなべ也。又曰(またいわく)、人をゑ(え)らぶべし。云意(いうこころ)は、心(こころ)謹信(きんしん)なる人に煎(せん)じさせてよしと也。粗率(そそつ)なる者に任(まか)すべからず。薬を服するに、五臓四肢(ごぞうしし)に達するには湯(ゆ)を用(もち)ゆ。胃中(いちゅう)にとゞめんとせば、散(さん)を用(もち)ゆ。下部(かぶ)の病(やまい)には丸(がん)に宜(よろ)し。急速(きゅうそく)の病ならば、湯を用(もち)ゆ。緩々(かんかん)なるには散(さん)を用ゆ。甚(はなはだ)緩(ゆる)き症(やまい)には、丸薬(まるがん)に宜(よろ)し。食傷(しょくしょう)、腹痛などの急病には煎湯(せんとう)を用(もち)ゆ。散薬(さんやく)も可(か)也。丸薬(がんやく)は、にぶし。もし用(もち)ひば、こまかにかみくだきて用(もち)ゆべし。
養生訓(意訳)
薬の調合は、大雑把な人に任せてはいけません。
通解
さらに、以下のような指針もあります。
薬を煎じる際には、砂罐(やきものなべ)を使用するべきです。これは焼き物の鍋のことです。また、信頼できる人に煎じさせるべきです。言いたいことは、心を慎重に信じられる人に煎じさせることが望ましいということです。軽率な人に任せてはいけません。
薬を服用する際、五臓(臓器)や四肢に作用させるには湯(お湯)を使用します。胃の中で薬が停滞してしまった場合は、散剤(粉末状の薬)を使用します。下部の病気には丸薬が適しています。急速な病気の場合は湯を使用し、緩慢な病気には散剤を使用します。非常に緩慢な病気には丸薬が適しています。食傷や腹痛などの急性疾患には煎湯を使用します。散剤も使用可能です。丸薬は効果が鈍いため、必要な場合は細かく噛んで服用するべきです。