養生訓349(巻第七 用薬)
補湯(ほとう)は、煎湯(せんとう)熱き時、少づゝのめばつかえず。ゆるやかに験(げん)を得(う)べし。一時に多く服すべからず。補湯(ほとう)を服する間、殊(ことに)酒食を過(すご)さず、一切の停滞(ていたい)する物くらふべからず。酒食滞塞(たいそく)し、或(あるいは)薬を服し過(すご)し、薬力めぐらざれば、気をふさぎ、服中(ふくちゅう)滞(とどこお)り、食を妨(さまた)げて病をます。しるしなくして害あり。故に補薬(ほやく)を用(もち) る事、その節制(せっせい)むづかし。良医は、用(もちい)やう能(よく)してなづまず。庸医(ようい)は用やうあしくして滞(とどこお)る。古人(こじん)は、補薬(ほやく)を用(もちい)るその間に、邪(じゃ)をさる薬を兼(ね)用(もち)ゆ。邪気(じゃき)されば、補薬にちからあり。補(おぎない)に専一(せんいち)なれば、なづみて益なく、かへつて害あり。是(これ)古人(こじん)の説なり。
養生訓(意訳)
薬を飲んでいる時期は、食材や生活習慣にも注意しましょう。
通解
補湯の場合、煎じた薬の湯が熱いうちに少量ずつ飲むと、体に負担をかけずにゆっくりと効果を得ることができます。一度に大量に服用するべきではありません。補湯を服用する間は、特に飲食物を過剰に摂らず、停滞を引き起こすような物を避けるべきです。飲酒や過食が滞りを引き起こし、または薬を過剰に摂ると、薬の効力が回りにくくなり、気が詰まり、服用中の滞りが生じ、食事を妨げて病状を悪化させる可能性があります。十分な節制がなければ害があります。そのため、補薬を使用する場合は、その節制が非常に難しいことを理解する必要があります。良い医者は、適切に使用する能力を持ち、過剰摂取を避けます。一方、平凡な医者は、過剰な使用や滞りを引き起こす傾向があります。
古代の医者たちは、補薬を使用する際に、邪気を払う薬を併用しました。邪気が存在する場合、補薬に力があります。ただし、補薬に専念すると、過剰であり、逆に害をもたらすことがあります。これは古代の医者の説です。