養生訓298(第六巻 慎病)
頓死(とんし)の症(しょう)多し。卒中風(そっちゅうふう)、中気(ちゅうき)、中悪(ちゅうあく)、中毒(ちゅうどく)、中暑(ちゅうしょ)、凍死(とうし)、湯火(とうか)、食傷(しょくしょう)、霍乱(かくらん)、破傷風(はしょうふう)、喉痺(こうひ)、痰厥(たんけつ)失血(けっしつ)、打撲(だぼく)、小児(しょうじ)の馬脾風(ばびふう)等の症、皆(みな)卒死(そつし)す。此外(このほか)、又、五絶(ごぜつ)とて、五種(ごしゅ)の頓死(とんし)あり。一には自(みずから)くびる。二には、おしにうたる。三には水におぼる。四には夜(よる)押厭(おそ)はる。五には婦人難産(ふじんなんざん)。是皆(これみな)、暴死(ぼうし)する症(やまい)なり。常(つね)の(とき)時、方書(ほうしょ)を考(かんが)へ、又、其(その)治法(ちほう)を、良医にたつねて、しり置(おく)べし。かねて用意なくして、俄(にわか)に所置(しょち)を失(うしな)ふべからず。
養生訓(意訳)
急死する病気は、たくさんあります。例えば脳梗塞や心筋梗塞などです。これらの病気は発作が起きた時の対処が重要です。日頃から、その対処について事前の準備を怠らないようにしましょう。準備と知識は命を救います。
通解
頓死(とんし)は,さまざまな症状によって引き起こされることがあります。その中には、卒中風(そっちゅうぷ)、中気(ちゅうき)、中悪(ちゅうあく)、中毒(ちゅうどく)、中暑(ちゅうしょ)、凍死(とうし)、湯火(やけど)、食傷(しょくしょう)、霍乱(かくらん)、破傷風(はしょうふう)、喉痺(こうひ)、痰厥(たんけつ)、失血(けっしつ)、打撲(だぼく)、小児の馬脾風(ばびふう)などが含まれます。これらの症状により、多くの人が突然死してしまうことがあります。
また、頓死の中でも「五絶」と呼ばれる状態もあります。一つ目は自ら首を絞めること、二つ目は他人に殺されること、三つ目は水に溺れること、四つ目は夜間に突然押しつぶされること、五つ目は婦人の難産です。これらはいずれも突然死する状態を指しています。
これらの症状は暴死をもたらすものであり、普段から適切な治療法や治療書を参考にし、経験豊かな医師の指導を受けることが重要です。予め準備をしておかず、突然に症状が現れた場合は対処が難しい場合があります。
馬脾風とはジフテリアのこと。
喉痺とは、のどが腫れて痛む病気のこと。