養生訓296(第六巻 慎病)

食(ねっしょく)して汗(あせ)いでば、風に当るべからず。凡(およそ)そ人の身、高き処(ところ)よりおち、木石(もくせき)におされなどして、損傷(そんしょう)したる処(ところ)に、灸をする事なかれ。灸をすれば、くすりを服(ふく)してもしるしなし。又、兵器(へいき)にやぶられて、血(ち)おほく出たる者は、必(かならず)のんどかはくもの也。水をあたふべからず。甚(はなはだ)あしゝ。又、粥(かゆ)をのましむべからず。粥(かゆ)をのめば、血わき出で、必(かならず)死ぬ。是等(これら)の事、かねてしらずんばあるべからず。又、金瘡折傷(きんそうせっしょう)、口開(くちひら)きたる瘡(そう)、風にあたるべからず。扇(おおぎ)にてもあふぐべからず。痓症(ししょう)となり、或(あるいは)破傷風(はしょうふう)となる。