養生訓272(巻第五 湯浴)
暑月(しょげつ)の外(ほか)、五日(いつか)に一度沐(かみあら)ひ、十日に一度浴(よく)す。是(これ)古法(こほう)なり。夏月(かげつ)に非(あら)ずして、しばしば浴すべからず。気(き)、快(こころよし)といへども気へる。あつからざる温湯(おんとう)を少(すこし)盥(たらい)に入て、別の温湯(おんとう)を、肩背(かたせ)より少しづゝそゝぎ、早くやむれば、気(き)よくめぐり、食(しょく)を消す。寒月(かんげつ)は身あたゝまり、陽気(ようき)を助く。汗を発(はっ)せず。此如(かくのごとく)すれば、しばしば浴(よく)するも害なし。しばしば浴(よく)するには、肩背(かたせ)は湯をそゝぎたるのみにて、垢(あか)を洗(あら)はず、只(ただ)下部(げぶ)を洗ひて早くやむべし。久しく浴(よく)し、身を温(あたた)め過(すご)すべからず。
養生訓(意訳)
お風呂に入れない時は、シャワーで汗と汚れを落とすだけでも体に良いでしょう。
通解
暑い季節、特に夏月以外では、五日に一度は身体を洗い、十日に一度は入浴しましょう。これは古来の健康法です。夏季以外の時期には、頻繁に入浴しないようにしましょう。熱くない温かいお湯を浴槽に準備し、別の温かいお湯を肩から少しずつかけます。すぐに体が温まれば、体内の気がよくめぐり、食事の消化も助けられます。寒い季節には、体を温め、陽気を増進させることが重要ですが、過度に汗をかかないように注意しましょう。
頻繁に入浴する場合、肩と背中だけを洗い、身体の汚れをしっかり洗い流すことは避け、下半身を洗いながら速やかに終えるべきです。長時間入浴し、体を過度に温めないようにしましょう。