養生訓232(巻第四 飲茶 附 煙草)

たばこは、近年、天正(てんしょう)、慶長(けいちょう)の比(ころ)、異国よりわたる。淡婆姑(たんぱこ)は和語にあらず。蛮語也(ばんごなり)。近世の中華の書に多くのせたり。又、烟草(えんそう)と云。朝鮮にては南草(なぐさ)と云。和俗これを莨(ろう)とうとするは誤れり。ろうとうは別物なり。烟草は性毒あり。煙をふくみて眩(めま)ひ倒る事あり。習へば大なる害なく、少は益ありといへ共、損多し。病をなす事あり。又、火災のうれひあり。習へばくせになり、むさぼりて後には止めがたし。事多くなり、いたつがはしく家僕を労す。初より、ふくまざるにしかず。貧民は費(ついえ)多し。

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