養生訓37(巻第一総論上)

「養生の術は、つとむべき事を,よくつとめて、身をうごかし、気を、めぐらすをよしとす。
つとむべき事を、つとめずして、臥(ふ)す事をこのみ、身をやすめ、おこたりて動かさざるは、甚(はなはだ)養生に害あり。
久しく安坐し、身をうごかさざれば、元気めぐらず、食気(しょくき)とどこほりて、病おこる。
ことに、ふす事をこのみ、ねぶり多きをいむ。食後には、必(かならず)数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消(け)すべし。
ねぶり、ふすべからず。父母に、つかへて力をつくし、君に、つかへて、まめやかに、つとめ、朝は早くおき、夕(ゆう)はおそくいね、四民(しみん)ともに、我が家事を、よくつとめておこたらず。
士(さむらい)となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽(れいらく)をまなび、弓を射(い)、馬にのり、武芸(ぶげい)をならひて身をうごかすべし。」

意訳

養生の基本は、規則正しい生活習慣を守ることです。
適度な労働や仕事は健康に良いです。

また、同じ姿勢で長くいると体がなまって健康に良くありません。
そして、過度に、寝過ごすのも体に悪いです。

通解

養生の術は、つとめるべきことをよく実行し身体を動かし気をめぐらすことが重要である。

つとめるべきことを怠って、ただ寝て休むことを好み身体を休ませて動かさないことは非常に健康に悪影響を及ぼします。
長時間安静にしていると元気がめぐらず消化不良になって病気が発生する可能性が高まります。

特に、過度に寝たり休んだりすることは避けるべきです。食事の後は必ず数百歩歩行して気をめぐらし食事を消化させることが重要です。

眠りすぎることも避けるべきです。朝は早く起きて、夜は遅く寝るようにし家事を怠らずに親に奉仕し上司には真面目に仕え四民(一般市民)とともに家事をよく行うことが大切です。

士となる人は、幼い時から書を読み手を習い礼楽を学び弓を射て馬に乗り武芸を身につけて身体を動かすべきです。これらの行動が養生の術として重要視されています。

「いとけなき時」とは、

いとけなき時というフレーズは、日本語で「無邪気な時」や「幼い頃」を指すことがあります。この表現は、過去の幼少期や無邪気な瞬間を思い出す際に使用されることがあります。このフレーズは感傷的な要素を含んでおり大人になると失われる純粋さや無邪気さを指すことが多いです。

気づき

生活習慣病の原因の一つに、運動不足が指摘される場合があります。

時々、この運動不足の不足分が、よく分からなくなる時があります。

そうなのです。不足分の加減が分からなくなるのです。

中国のことわざに、一張一弛[yī zhāng yī chí](いっちょういっし)とも、あります。

あまり、気にせず、適度に行うくらいの気持ちの方が良いのかも知れませんね。

※一張一弛
弓の弦の張り方に由来し、気を引き締めたり弛めたり、緩急自在にすること。
また、心を緊張させたり、リラックスさせたりするたとえ。