養生訓385

薬を煎ずるは、磁器(じき)よし、陶器(とうき)也(なり)。又、砂罐(さくわん)と云。銅(どう)をいまざる薬は、ふるき銅器(どうき)もよし。新しきは銅(どう)気多(きおお)くしてあしゝ。世俗(せぞく)に薬鍋(くすりなべ)と云(いう)は、銅(どう)厚くして銅(どう)気(き)多し。薬罐(やくわん)と云は、銅(どう)うすくして銅(どう)気すくなし。形小(かたちしょう)なるがよし。利薬(りやく)を久しく煎じつめては、消導(しょうどう)発散(はっさん)すべき生気(しょうき)の力なし。煎(せん)じつめずして、飪(にえばな)を失はざる生気(しょうき)あるを服して、病(やまい)をせむべし。たとへば、茶をせんじ、生魚(なまうお)を煮(に)、豆腐を煮るが如し。生熟(なまじゅく)の間、よき程の飪(にえばな) を失はざれば、味よくしてつかえず。飪(にえばな)を失へば、味(あじ) あしくして、つかえやすきが如(ごと)し。

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