養生訓361(巻第七 用薬)
補薬(ほやく)を煎(せん)ずるには、かたき木、かたき炭などのつよき火を用(もち)ゆべからず。かれたる蘆(あし)の火、枯竹(かれたけ)、桑柴(くわしば)の火、或(あるいは)けし炭(ずみ)など、一切(いっさい)のやはらかなる火よし。はげしく、もゆる火を用(もち)ゆれば、薬力を損(そん)ず。利薬(りやく)を煎ずるには、かたき木、かたき炭(すみ)などの、さかんなるつよき火を用ゆべし。是(これ)薬力をたすくるなり。薬一服(くすりいっぷく)の大小、軽重(けいちょう)は、病症(びょうしょう)により、人の大小強弱によつて、増減すべし。補湯(ほとう)は、小剤(しょうざい)にして少(すこ)づゝ服(ふく)し、おそく効(しるし)をとるべし。多く用(もち)ひ過(すご)せば、滞(とどこおり)りふさがる。発散瀉下疎通(はっさんしゃかそつう)の利湯(りとう)は、大剤(だいざい)にして、つよきに宜(よろ)し、早く効(しるし)をとるべし。
養生訓(意訳)
薬の適量は、その人の病状や体格、体質により判断しましょう。
通解
補薬を煎じる場合、堅い木や炭などの強い火を使ってはいけません。枯れた葦の火や枯れた竹、桑の柴火、または消し炭など、穏やかな火を使用しましょう。激しい沸騰や煮立つような火を使うと、薬の効力が損なわれます。一方、利薬を煎じる場合には、堅い木や炭などの強い火を使うべきです。これによって薬の効力を高めることができます。薬の服用量や服用回数は、病状や個人の体格や強さによって増減させるべきです。補湯は小さな量を少しずつ服用し、効果が現れるのをゆっくり待つべきです。過剰に使用すると、消化不良や詰まりを引き起こす可能性があります。発散や下痢作用のある利湯は、大量に服用して、強く効果を発揮させることが望ましいです。