養生訓319(第六巻 択医)
張仲景(ちょうちゅうけい)は、百世(ひゃくせい)の医祖(いそ)也。其後(そのご)、歴代(れきだい)の明医(めいい)すくなからず。各(おのおの)発明(はっめい)する処(ところ)多しといへ共、各(おのおの)其説(そのせつ)に偏僻(へんぺき)の失(しつ)あり。取捨(しゅしゃ)すべし。孫思邈(そんしばく)は、又、養生の祖(そ)なり。千金方(せんきんほう)をあらはす。養生の術も医方(いほう)も、皆、宗(むね)とすべし。老荘(ろうそう)を好みて異術(いじゅつ)の人なれど、長(ちょう)ずる所(ところ)多し。医生(いせい)にすゝむるに、儒書(じゅしょ)に通じ、易(えき)を知るを以(もって)す。盧照鄰(ろしょうりん)に答(こた)へし数語(すうご)、皆、至(いたって)理(り)あり。此人(このひと)、後世(こうせい)に益あり。医術に功(こう)ある事、皇甫謐(こうほひつ)、葛洪(かっこう)、陶弘景(とうこうけい)等の諸子(しょし)に越(こ)たり。寿(いのち)百余歳(ひゃくよさい)なりしは、よく保養(ほよう)の術に長(ちょう)ぜし効(しるし)なるべし。
養生訓(意訳)
医学は時代と共に発展します。しかし、中には偏僻なものもあります。自分に合ったものを取捨選択すべきです。
通解
張仲景は、数百年にわたる医学の祖とされています。その後も、明の時代には優れた医師が多く現れましたが、各々が独自の理論を発展させる一方で、それぞれの説には偏った失点もあります。ですから、取捨選択をする必要があります。
孫思邈は養生の祖とも言われ、彼の著書『千金方』は有名です。養生術と医術は、どちらも重要であり、それぞれを尊重すべきです。彼は老荘思想に傾倒し、異なる術を好みましたが、それでも優れたところが多くありました。医師になるためには、儒学の書物を学び、易を理解することが重要です。盧照鄰の数語に答える中にも、至理があります。彼は後世に多くの影響を与える人物となりました。
功績がある医師としては、皇甫謐や葛洪、陶弘景などの子孫たちも挙げられます。彼らは医術において大きな成果を上げました。寿命が百歳を超えたことは、良い保養法を長く実践した結果だと考えられます。