養生訓93(巻第二総論下)
何事(なにごと)もあまり、よくせんとして、いそげば、必(かならず)あしくなる。病を治(ち) するも亦(また) しかり。医(い)をゑ(え)らばず、みだりに医(い)を求め、薬を服し、又、鍼灸(しんきゅう)をみだりに用ひ、たゝりをなす事多し。導引(どういん)・按摩(いんま)も亦(また)しかり。
わが病に当否(とうひ)をしらで、妄(みだり)に治(じ)を求むべからず。湯治(とうじ)も亦しかり。病に応ずると応ぜざるをゑ(え) らばず、みだりに湯治して病をまし、死にいたる。
およそ薬治(やくじ)・鍼灸(しんきゅう)・導引・按摩・湯治。此六(このろく)の事、其病と其治(そのち)との当否(とうひ)をよくゑ(え)らんで用ゆべし。其(その) 当否(とうひ) をしらで、みだりに用ゆれば、あやまりて禍(わざわい)をなす事多し。
是(これ)よくせんとして、かへつて、あしくする也。
意訳
急(し) いては事を損じます。病気も同じです。みだりに、薬を使って悪くなる場合もあります。その病気への対策として、まず、冷静に適切なものを選ぶ必要があります。
通解
何事も過度に急いで進めようとすると時として良くならないことがあります。病気を治療する場合も同様です。医師を選ばずに無理に医者を求め、薬を乱用したり鍼灸を無分別に行ったり導引や按摩も同様です。
自身の病状を正しく理解せずに無駄に治療を求めるべきではありません。湯治も同様です。病状に適応した治療を受けずに、無分別に湯治を行うと、病状が悪化し、最悪の場合死に至ることもあります。薬治療、鍼灸、導引、按摩、湯治のこれら六つの方法は、病状と治療方法との適切な合致を考慮して用いるべきです。その適否を判断せずに無分別に使用すると、誤った方向に進み、逆効果となることが多いです。急ぐことで、かえって状況を悪化させてしまうことがあるのです。
気づき
物事が思う道理に行かない場合、その打開策を急いで行おうとします。しかし、その効果については、私の場合、かえって悪くなる場合も多いです。昔から、急がば回れとの諺もありますね。
「導引」とは
伝統的な東洋医学や漢方医学では、「導引」は体内のエネルギーや血液、気の流れを調整し、バランスを取るための手法や治療法を指すことがあります。鍼灸療法や按摩、特定の食事療法などが導引の手法に含まれることがあります。