養生訓108
ひとり家に居て、閑(しずか)に日を送り、古書(こしょ)をよみ、古人の詩歌(しか)を吟じ、香(こう)をたき、古法帖(こほうじょう)を玩(あそ)び、山水をのぞみ、月花(げっか)をめで、草木を愛し、四時(よじ)の好景(こうけい)を玩(あそ)び、酒を微酔(びすい)にのみ、園菜(えんさい)を煮るも、皆(みな) 是(これ) 心を楽ましめ、気を養ふ助なり。貧賎(ひんせん)の人も此楽(このたのしみ)、つねに得やすし。もしよく此楽をしれらば、富貴(ふうき)にして楽をしらざる人にまさるべし。
意訳
孤独でも、本を読んだり、山河を歩いたり、菜園を作ったり、心を楽しむことは、たくさんあります。これらの楽しみを知っている方は、名誉や財産がある人よりも幸せです。
通解
一人で家にいて、静かに日々を過ごし、古典を読んで古代の詩歌を詠み、香を焚き、古代の法帖を楽しんで、自然の山水を眺め、月や花を楽しみ、草木を愛で、四季の美しい景色を楽しんで、微酔になりながら酒を楽しみ、自分で育てた野菜を調理することなど、これらの活動は全て心を楽しませ、気を養うのに助けとなります。貧しさや地位に関係なく、誰でもこのような楽しみを常に得ることができます。もしもこれらの楽しみ方をよく知っていれば、富貴であるがゆえに楽しみ方を知らない人にも勝ることでしょう。
気づき
人生の目標は、いったい何かを考えさせられます。きっと、寿命が尽きるまで健康で楽しく生きることかも知れませんね。