養生訓364(巻第七 用薬)
腎(じん)は、水を主(つかさ)どる。五臓六腑(ごぞうろっぷ)の精(せい)をうけて,をさむ故(ゆえ)、五臓(ごぞう)盛(さかん)なれば、腎水(じんすい)盛(さかん)なり。腎(じん)の臓(ぞう)ひとつに、精(せい)あるに非(あら)ず。然(しか)れば、腎(じん)を補(おぎな)はんとて専(もっぱら)腎薬(じんやく)を用(もち)ゆべからず。腎(じん)は下部(かぶ)にあつて五臓六腑(ごぞうろっぷ)の根(ね)とす。腎気(じんき)、虚(きょ)すれば一身(いっしん)の根本(こんぽん)衰(おと) ろふ。故に、養生の道は、腎気(じんき)をよく保つべし。腎気(じんき)亡びては生命を保(たも)ちがたし。精気(せいき)をおしまずして、薬治(やくじ)と食治(しょくじ)とを以(もって)、腎(じん)を補(おぎな)はんとするは末(すえ)なり。しるしなかるべし。
養生訓(意訳)
腎臓は,五臓六腑の要です。ですから、養生の道は腎臓をよく保つこととも言えます。
通解
腎臓は水を司ります。五臓六腑のエッセンスを受け取り、それを冷やすため、五臓が盛り上がれば腎水も盛り上がります。腎臓だけがエッセンスを持つわけではありません。したがって、腎臓を補うために専ら腎薬を使用することは避けるべきです。腎臓は下部にあり、五臓六腑の根源とされます。腎気が虚弱になると、全身の根本的な機能が衰えます。そのため、養生の道は腎気を良好な状態に保つことです。腎気が失われると生命を維持することが難しくなります。精気を抑えずに、薬や食事療法を通じて腎臓を補うことが重要です。これは注意すべきことです。