養生訓297(第六巻 慎病)
冬、朝(あした)に出て遠くゆかば、酒をのんで寒(かん)をふせぐべし。空腹にして寒にあたるべからず。酒をのまざる人は、粥を食ふべし。生姜(しょうが)をも食ふべし。陰霧(いんむ)の中、遠く行べからず。やむ事を得(え)ずして、遠くゆかば、酒食(しゅしょく)を以(もって)防(ふせ)ぐべし。雪中(せっちゅう)に跣(はだし)にて行て、甚(はなはだ)寒(ひ)えたるに、熱湯(あつきゆ)にて足を洗(あら)ふべからず。火に早くあたるべからず。大寒(たいかん)にあたりて、即(そく)熱(あつき)物を食飲すべからず。
養生訓(意訳)
冬場に遠方に出向く時は、十分に体を温めてから出かけましょう。また、帰宅後は、ゆっくり手足を温めましょう。
通解
冬、朝に出て遠く行くときは、酒を飲んで寒さをしのぐべきです。空腹のままで寒さにあたるべきではありません。酒を飲まない人は、おかゆを食べるべきです。また、生姜も食べるべきです。濃い霧の中では、遠く行くべきではありません。やむを得ず遠く行く場合は、食べ物と酒を持って身を守るべきです。雪の中を裸足で歩くと、非常に寒くなりますので、熱いお湯で足を洗うべきではありません。火に急に近づくべきではありません。最も寒い時期には、すぐに熱い食べ物や飲み物を摂取すべきではありません。