養生訓295(第六巻 慎病)
除日(じょにち)には、父祖(ふそ)の神前(しんぜん)を掃除し、家内(かない)、殊(こと)に臥室(がしつ)のちりをはらひ、夕は燈(ともしび)をともして、明朝(みょうちょう)にいたり、家内(かない)光明(こうみょう)ならしめ、香(こう)を所々(しょしょ)にたき、かまどにて爆竹(ばくちく)し、火をたきて、陽気(ようき)を助くべし。家族と炉(ろ)をかこみ、和気(わき)津々(しんしん)として、人とあらそはず、家人(かじん)を、いかりのゝしるべからず。父母、尊重(そんちょう)を拝祝(はいしゅく)し、家内、大小(だいしょう)上下(じょうげ)椒酒(しょうしゅ)をのんで歓(よろこび)び楽しみ、終夜(しゅうや)いねずして旧(ふる)き歳(とし)をおくり、新き年をむかへて、朝にいたる。是(これ)を歳(とし)を守(まも)ると云(いう)。
養生訓(意訳)
大晦日は,一年の決算です。家の中をきれいに掃除をしましょう。そして、部屋をを明るくて、香を焚き、和気あいあいとして、出来るだけ争いごとは避けましょう。
通解
除日には、先祖の神前を掃除し、家中、特に寝室の埃を払い、夕方には燈をともして、明け方までに灯を守り、家内を明るくし、香を所々にたいて、かまどで爆竹を鳴らし、火をたき、陽気を助けるべきです。家族と囲炉裏を囲んで和やかに過ごし、人と争わず、家族を怒らせるべきではありません。父母を尊重して祝福し、家族全員で大小の上下椒酒を飲んで喜び楽しんで、一晩中眠らずに旧年を送り、新しい年を迎えます。これが歳を守ると言われています。
「拝祝」とは
「拝祝」(はいしゅく)は、「祝うこと」を意味します。「拝」は「お参りする」「礼をする」という意味であり、「祝」は「お祝いする」という意味です。したがって、「拝祝」とは、何かを祝う際に、敬意を表して祝うことを指します。例えば、誕生日や結婚記念日などの特別な日に、人々が祝福の意を込めてお祝いすることを指す場合に使用されます。
「椒酒」とは
古くは、中国の伝統的なアルコール飲料です。主に四川省や重慶市などの地域で生産され、消費されています。椒酒は、白酒(中国の蒸留酒)に、唐辛子や香辛料を漬け込んで作られます。そのため、独特の辛い香りや味が特徴です。椒酒(しょうしゅ)は、一般的に中国の火鍋や各種の料理と一緒に楽しまれます。日本で椒酒は、サンショウの実とカシワの葉を入れた酒です。元日に飲むと長生きするといわれ、長寿を祈願する酒として知られています。