養生訓276(巻第五 湯浴)
湯治(とうじ)の間、熱性(ねっせい)の物を食ふべからず。大酒大食(たしゅたいしょく)すべからず。時々歩行し、身をうごかし、食気をめぐらすべし。湯治(とうじ)の内、房事(ぼうじ)をおかす事、大(おおい)にいむ。湯よりあがりても、十余日(じゅうよひ)いむ。灸(きゅう)治も同じ。湯治(とうじ)の間、又、湯治の後、十日ばかり補薬(ほやく)をのむべし。其間(そのあいだ)、性よき魚鳥(ぎょりょう)の肉を、少(し)づつ食して、薬力(やくりき)をたすけ、脾胃(ひい)を養ふべし。冷(ひえて)、性(しょう)あしき物、食すべからず。又、大酒大食をいむ。湯治(とうじ)しても、後の保養なければ益なし。
養生訓(意訳)
湯治は身体に良いでしょう。軽い運動もしたらいいです。大酒や過食をしてはいけません。ただ、湯治が終わった後の生活習慣の改善がなければ無意味になります。
通解
湯治中は、熱性の食べ物を避け、大量の飲酒や大食は避けるべきです。定期的に散歩をし、体を動かし、食べ物の消化を助けましょう。湯治中は、性交渉を避けることが大切で、湯治が終わってもしばらくは避けるべきです。灸治療も同様です。湯治中および湯治後、おおよそ十日間、補薬を摂ることが良いでしょう。この期間中、消化しやすい性質の良い鳥や魚の肉を少量ずつ摂り、薬の効果を助け、胃腸をサポートしましょう。冷たい性質の食べ物は避け、大量の飲酒や大食をしないようにしましょう。湯治を行っても、その後の適切な休息や食事がなければ、効果は得られません。