養生訓268(巻第五 二便)
うへては、坐(ざ)ざして小便し、飽(あき)ては、立て小便すべし。二便(にべん)は早く通じて去(さる)べし。こらゆるは害あり。もしは不意(ふい)に、いそがしき事(こと)出来ては、二便(にべん)を去(さる)べきいとまなし。小便を久しく忍べば、たちまち小便(しょうべん)ふさがりて、通(つう)ぜざる病となる事あり。是を転ふ(てんふ)と云。又、淋(りん)となる。大便(だいべん)をしばしば忍べば気痔(きじ)となる。又、大便をつとめて努力すべからず。気上(きあが)り、目あしく、心(むね)さわぐ。害(がい)多し。自然(じねん)に任(まか)すべし。只(ただ)津液(しんえき)を生じ、身体をうるほし、腸胃(ちょうい)の気をめぐらす薬をのむべし。麻仁(まにん)、胡麻(ごま)、杏仁(きょうにん)、桃仁(とうにん)など食(くら)ふべし。秘結(ひけつ)する食物、餅(もち)、柿、芥子(からし)など禁じて、くらふべからず。大便秘するは、大なる害なし。小便久(ひさ)しく秘(ひ)するは危(あや)うし。
養生訓(意訳)
大便も小便も我慢しない方が良いでしょう。ただ、大便は、無理に力んで出さない方が良いでしょう。自然に任せましょう。血圧が上がるなど害があります。
通解
普通は座って小便し、飽和したら立って小便をしましょう。両方の排泄物が早く体を離れるようにしましょう。これらの習慣は健康に害を及ぼすことがあります。予期せぬ状況で忙しい場合でも、急いで排泄物を体外に出すことが大切です。小便を長く我慢すると、急に排尿ができなくなり、尿路の問題を引き起こすことがあります。これを「転ふ」と言います。また、淋症(りんしょう)の原因ともなります。
大便を頻繁に我慢すると、肛門痔(きもんじ)の原因となることがあります。また、大便をする際に過度な努力をすることは避けましょう。これにより、腸が締め付けられ、心臓に負担がかかり、目眩や不快感を引き起こすことがあります。大自然に身を任せるべきであり、自然な排泄を促進するために、津液(しんえき、消化液)を生成し、腸胃の動きを活発にするための食材を摂取しましょう。麻仁、胡麻、杏仁、桃仁などが良い選択肢です。大便が硬い場合は、餅、柿、芥子などの食物を避け、水分と食物繊維を摂取することが大切です。大便秘は健康に害を及ぼすことがあるため、適切な排便習慣を心がけましょう。小便を長く我慢することも危険です。