養生訓241(巻第五 五官)
心は人身の主君(しゅくん)也。故(ゆえ)天君(てんくん)と云(いう)。思ふ事をつかさどる。耳目口鼻形(じもくこうびけい)此の五(いつつ)は、きくと、見ると、かぐと、物(もの)いひ、物くふと、うごくと、各(おのおの)其事(そのこと)をつかさどる職分(しょくぶん)ある故に、五官(ごかん)と云。心のつかひ物なり。心は内にありて五官(ごかん)をつかさどる。よく思ひて、五官(ごかん)の是非を正(ただ)すべし。天君(てんくん)を以(も)って五官(ごかん)をつかふは順(じゅん)なり。五官を以(もって)天君をつかふは逆なり。心は身の主なれば、安楽(あんらく)ならしめて苦しむべからず。五官(ごかん)は天君(てんくん)の命をうけ、各官職(おのおのかんしょく)をよくつとめて、恣(ほしいまま)なるべからず。
養生訓(意訳)
自分の心と身体は一体です。心が悪い習慣を決めれば身体は従います。自分で自分の身体を苦しめてはなりません。
通解
心は人の身体の主君と言われ、それ故に天君とも呼ばれます。心は思考を司り、五官(耳、目、口、鼻、皮膚)はそれぞれ職務を担当しており、聞く、見る、嗅ぐ、物を言う、触る、動かすなど、異なる役割があります。これらの五官をまとめて五官と呼びます。心は内部にあり、五官を統制します。ですから、心が健康であり、五官が適切に機能するように思考を整えることが大切です。心は主君であるため、五官を指導し、天君に従うようにするべきです。逆に、五官が主導し、心がそれに従うのは誤りです。心が身体の主であるため、心を安定させて苦しみを避けることが重要です。五官は天君からの指令を受け、それぞれの役割を果たすべきであり、自己の欲望に従ってはいけません。
気づき
生活習慣の改善も、結局のところ、自分自身の気持ちが大切だということでしょうか?