養生訓223(巻第四 飲酒)
市(いち)に、かふ酒に、灰を入(いれ)たるは毒あり。酸味(さんみ)あるも飲べからず。酒(さけ)久しくなりて、味(あじ)変じたるは毒あり。のむべからず。濁酒(だくしゅ)のこきは脾胃(ひい)に滞り、気をふさぐ。のむべからず。醇酒(じゅんしゅ)の美(び)なるを、朝夕(あさゆう)飯後(めしご)に少し、のみて、微酔(びすい)すべし。醴酒(れいしゅ)は製法の精(くわし)きを熱飲(ねついん)すれば、胃を厚くす、あしきを冷飲(れいいん)すべからず。
養生訓(意訳)
お酒は、酸味が出たものや期間が過ぎて味が変わったものは、身体に良くないので飲まないようにしましょう。お酒は上物を少し飲んで少し酔うほどが美味しく楽しめるでしょう。
通解
市販の酒に灰を混ぜると毒が含まれることがありますので、灰入りの酒は避けるべきです。酸味のあるものも飲むべきではありません。酒が長い時間経って味が変わる場合も毒が含まれていることがありますので、そのような酒は飲むべきではありません。濁った酒を飲むと、脾臓と胃に滞りを生じ、体内の気が詰まる可能性があります。このような酒は避けるべきです。
逆に、醇酒(じゅんしゅ)と呼ばれる美味しい酒は、朝と夕食後に少量ずつ飲むことで微酔状態になる程度が良いです。また、醴酒も製法が高度であれば熱めに飲んでも胃に影響を及ぼしませんが、冷たい状態で飲むべきではありません。