養生訓85(巻第二総論下)

ひとり家に居て、閑(しずか)に日を送り、古書(こしょ)をよみ、古人の詩歌(しか)を吟じ、香(こう)をたき、古法帖(こほうじょう)を玩(あそ)び、山水をのぞみ、月花(げっか)をめで、草木を愛し、四時(よじ)の好景(こうけい)を玩(あそ)び、酒を微酔(びすい)にのみ、園菜(えんさい)を煮るも、皆(みな) 是(これ) 心を楽ましめ、気を養ふ助なり。貧賎(ひんせん)の人も此楽(このたのしみ)、つねに得やすし。もしよく此楽をしれらば、富貴(ふうき)にして楽をしらざる人にまさるべし。