養生訓376(巻第八 養老)
衰老(すいろう)の人は、脾(ひ)胃(い)よはし。夏月(かげつ)は、尤(もっとも)慎んで保養すべし。暑熱(しょねつ)によつて、生冷の物をくらへば、泄瀉(せつしゃ)しやすし。瘧痢(おこり)も、おそるべし。一たび病すれば、大(おおい)に、やぶれて元気へる。残暑の時、殊におそるべし。又、寒月(かんげつ)は、老人は陽気すくなくして、寒邪(かんじゃ)に、やぶられやすし。心を用てふせぐべし。老人はことに生冷、こはき物、あぶらけねばく、滞(とどこお)りやすき物、こがれて、かはける物、ふるき物、くさき物をいむ。五味偏(へん)なる物、味よしとても、多く食(くら)ふべからず。夜食を、殊に心を用(もちい)て、つゝしむべし。
養生訓(意訳)
高齢者は、加齢により内臓も弱くなっています。特に、夏は下痢なども、起こしやすいです。そして、一度、病を発すれば、大病に変わる恐れもあります。冬も同じです。食事も注意しましょう。過食は禁物です。そして、夜食は、できるだけ慎んだ方が良いでしょう。
通解
衰えた老人の場合、脾胃の機能が低下しています。特に夏の月には慎重に保養する必要があります。暑さによって、冷たい食べ物を摂ると下痢しやすくなったり、熱病にかかりやすくなったりします。特に疟瘧(おこり)にも注意が必要です。一度病気にかかると、大きなダメージを受けて元気を失います。残暑の時期は特に注意が必要です。また、寒い季節には老人は陽気が低下し、寒邪に弱くなります。心を使って防ぐ必要があります。老人は特に生冷たる食べ物、胃に負担のかかるもの、消化が滞りやすいもの、焦げたり古くなったりした食べ物、腐敗した食べ物を避けるべきです。また、五味のバランスが偏った食べ物や美味しそうでも多く摂りすぎることも避けましょう。夜食についても注意深く心を使って摂るようにしましょう。