養生訓392(巻第八 灸法)
坐(ざ)して点(とも)せば、坐して灸す。臥(ふ)して点せば、臥して灸す。上(かみ)を先に灸し、下(しも)を後に灸す。少(すくなき)を先にし、多きを後にすべし。灸する時、風寒にあたるべからず。大風、大雨、大雪、陰霧(いんむ)、大暑(たいしょ)、大寒(かん)、雷電(らいでん)、虹睨(こうげい)、にあはゞ、やめて灸すべからず。天気晴(はれ)て後、灸すべし。急病は、かゝはらず。灸せんとする時、もし大に飽(あき)、大に飢(うえ)、酒に酔(よい)、大に怒(いか)り、憂(うれ)ひ、悲(かなし)み、すべて不祥(ふしょう)の時、灸すべからず。房事(ぼうじ)は灸前三日、灸後、七日いむべし。冬至(とうじ)の前五日、後十日、灸すべからず。灸後、淡食(たんしょく)にして血気和平に流行(はやり)、しやすからしむ。厚味(こうみ)を食(くい)過すべからず。大食すべからず。酒に大に酔(よう)べからず。熱麪(ねつめん)、生冷(しょうれい)、冷酒(れいしゅ)、風を動の物、肉の化(か)しがたき物、くらふべからず。
養生訓(意訳)
お灸をする時は、気候の状態や自分の体調の状況を見て行ったが良いでしょう。
通解
灸の際のさらなる指針について説明します。
坐って行う場合、坐ったまま灸を行います。臥して行う場合は、寝たままで灸を行います。
灸をする際は、上半身から始めて、下半身を後に灸します。また、少量の灸を最初に行い、その後に多くの灸を行うべきです。
灸をする際には、風寒にあたることを避ける必要があります。大風や大雨、大雪、陰霧、大暑、大寒、雷電、虹睨などの天候の悪い日には灸を行わないでください。天気の晴れた日に灸を行うことをおすすめします。
灸を行う前に、飽食や空腹、酒に酔っている、または怒りや憂い、悲しみなどの不祥な状態にある場合は、灸を行わないでください。
性行為は、灸をする前の3日間および灸をした後の7日間は避けるべきです。また、冬至の前の5日間および後の10日間も灸を行わないでください。
灸の後は、食事は淡食にし、血気を和らげ、体調を整えるために適度に休息をとるべきです。濃い味の食べ物や大食は避け、酒には適度に注意してください。また、熱い麺類、生冷たい食べ物、冷たい酒、風邪を引きやすい食べ物や消化しづらいものを摂取しないでください。