養生訓4(巻第一総論上)
「人となりて、此世(このよ)に生きては、ひとへに父母天地に孝をつくし、人倫(じんりん)の道を行なひ、義理にしたがひて、なるべき程は寿福(じゅふく)をうけ、久しく世にながらへて、喜び楽(たのし)みを、なさん事、誠に人の各(おのおの)願ふ処(ところ)ならずや。」
意訳
人として、生れて来たからには、親孝行をして、人の道から外れず、出来るだけ幸せに暮らし、健康で長生きすることは、誰しもが望む願いです。
通解
人としてこの世に生きるならば、まずは父母と天地に対して孝行をし、人間関係の道徳を守り、義理に忠実であるべきです。その結果として寿命と幸福を受け、長くこの世に生き、喜びと楽しみを追い求めることは、人々が望むことでありましょう。
「人倫」(じんりん)とは
「人倫」(じんりん)は、倫理や道徳に関する概念であり、人々の行動や相互関係における道徳的な原則や規範を指します。人倫は、社会的な規範や倫理的な価値観に基づいて、人々が他者との関係や行動を調整し、善悪を判断するための指針となります。
人倫は、文化や宗教、哲学によって異なる要素が含まれることがありますが、一般的には以下のような基本的な原則や概念が含まれます:
仁義:人々は他者に対して思いやりや配慮を示し、公平さや正義を実践するべきであるという概念。
誠実:真実を語り、他者との約束や契約を守ることが重要であるという信頼性や誠実さの原則。
公正:不公平な差別や偏見を排除し、法の下での平等を重視する原則。
礼儀正しさ:他者に対する礼儀や敬意を示すことが重要であるという文化的な価値。
思いやり:他人の感情やニーズに注意を払い、協力や支援を提供することが道徳的に価値があるとされる原則。
慈悲:他者に対する思いやりや同情心を持ち、苦しむ人々を助けることを重要視する概念。
責任:自己責任や他者への責任を果たすことが、倫理的な行動の一部とされる原則。
人倫は、個人の行動や社会の規範、法律の制定に影響を与えることがあり、文化や宗教によって異なる解釈や強調が行われています。倫理学や哲学においても、人倫についての研究や議論が行われており、個人や社会の良い道徳的な行動を探求するための重要なテーマとされています。