養生訓143(巻第三 飲食 上)
夕食は朝食より滞りやすく消化しがたし。晩食は少なきが良し。かろく淡き者をくらふべし。晩食に飣(さい)の数多きは宜(よろ)しからず。飣(さい)多くくらふべからず。二には、此の食もと農夫勤労して作り出せし苦しみを思いやるべし、わするべからず。魚鳥(ぎょちょう)などの味の濃く、あぶら有て重き物、夕食にあしし。菜類(さいるい)も薯蕷(やまのいも)、胡蘿蔔(にんじん)、菘菜(あをな)、芋根(いも)、慈姑(くわい)などの如き、滞(とどこう)りやすく、気をふさぐ物、晩食(ばんしょく)に多く食(く)ふべからず。食はざるは尤(もっとも)よし。
意訳
夕食は、朝食より、消化がよくありません。ですから、夕食の量を少なくする方がよいでしょう。夕食は、薄味がよく、魚肉など脂肪が多いものは少なくしたがよいでしょう。
通解
夕食は朝食に比べて消化が遅く、滞りやすい傾向があります。そのため、晩食は少量が良いです。軽くて消化の良い食材を選ぶべきです。夕食には、重いものや脂っこいものよりも、軽くてさっぱりとした味わいのものを選ぶことが良いでしょう。また、夕食には飣(さい)や味の濃いもの、脂っこいものは避けるべきです。特に魚や鳥のような肉や、油を多く含む食材は夕食には控えるべきです。また、野菜類の中でも、滞りやすいものや消化に時間がかかるもの、例えば山の芋、にんじん、胡瓜、芋根、慈姑などは夕食に多く摂るべきではありません。食事を抜くことも特に夕食にはおすすめです。
気づき
欧米の食生活は、どちらかと言えば、肉類や乳製品の類が多いような気がします。老後の夕食は、日本食の比率を増した方が良いのかも知れませんね。
菘菜とは
「菘菜(あをな)」は、主に中国の伝統的な野菜の一つです。これはアブラナ科に属する植物で、キャベツやカリフラワーなどと同じくらいの家族に属します。英語では「Chinese flowering cabbage」とも呼ばれます。
菘菜は、特に中国南部で一般的に栽培され、食べられています。花芽が形成される前に収穫され、茎や葉といった部分が食用とされます。食べ方としては、茎や葉を炒めたり、湯がいたりして調理されることが一般的です。
この野菜は、味がやや苦味があり、栄養価も豊富です。また、花芽が開花する前に収穫されることが一般的で、その際には美しい黄色や白い花芽が料理に彩りを添えます。
慈姑とは
慈姑(くわい)は、主に中国料理で使用される食材の一つで、ニンジン科に属する植物「慈姑」の果実を指します。慈姑の果実は円盤状で、外観が2つの角を持つことから、「双角菱」(そうかくびし)とも呼ばれます。これは主に水田や湖沼などに自生している水草で、果実は食用に利用されます。慈姑は生食することもありますが、一般的には皮をむいてから、薄切りにしてサラダや炒め物、スープ、餃子の具材などに使われます。食感はサクサクとした歯ごたえがあり、甘みがあります。中国料理では、慈姑は夏季に特によく使われ、料理に爽やかな風味や食感を加える役割を果たします。