養生訓141(巻第三 飲食 上)
酒食を過(すご)し、たたりをなすに、酒食を消すつよき薬を用(もち)ひされば、酒食を消化(しょうか)しがたし。たとえば、敵わが領内に乱入し、あだをなして、城郭(じょうかく)を攻め破らんとす、こなたより強兵(きょうへい)を出だして防戦せしめ、わが士卒(しそつ)多く打死(うちじに)せざれば敵にかちたがし、薬を用いて食を消化するには、是(こ)れ、わが腹中(ふくちゅう)を以て、敵味方の戦場とするなり。飲食する所の酒食敵となりて、わが腹中をせめやぶるのみならず、吾が用(もち)ふる所のつよき薬も、皆(みな)病を攻むれば元気もへる。敵兵も身方の兵も、わが腹中に入り乱れて戦わんより、外にふせぎて内に入れざらんには、しかじ。酒食を過(すご)さずしてひかえば、敵とはなるべからず。つよき薬を用いて、わが腹中を敵味方の合戦場とするは、胃の気をそこなひて、うらめし。
意訳
酒や食事の摂り過ぎは、腹痛など薬を必要とする場合があります。これは、例えば、戦に似ています。自軍に入った敵兵を殺すために、強い薬を飲むのです。そして、自分の体の中で敵味方が合戦します。勝っても自軍も疲弊します。無益な戦いは、最初からしないことです。
通解
飲食を過度にしてしまった場合、その対策のために、強力な薬を使用することになります。このことは、例えば、敵が自分たちの城に侵入し攻め込んでくると、防戦のために多くの犠牲を強いられます。
このように、薬を使用して食事を消化する際にも、腹の中を戦場のようにし、敵味方が入り乱れることになります。
その結果、薬や飲食物が腹の中で争うことになり、胃の健康を損なうことになります。
気づき
病気に対する最大の防御は予防なのでしょうか。出来るだけ自分の身体に中で戦はしたくないものですね。