養生訓131(巻第三 飲食 上)

飲食は飢渇(きかつ)をやめんためなれば、飢渇(きかつ)だにやみなば其(その)上(うえ)に、むさぼらず、ほしゐままにすべからず。飲食の欲を恣(ほしいまま)にする人は義理(ぎり)をわする。是を口腹(こうふく)の人と云(いい)いやしむべし。食過たるとて、薬を用ひて消化すれば、胃気(いき)、薬力(やくりき)のつよきにうたれて、生発(せいはつ)の和気(わき)をそこなふ。おしむべし。食飲(しょくいん)する時、思案(しあん)し、こらへて節(せつ)にすべし。心に好み、口に快(こころよ)き物にあはゞ、先(まず)心に戒めて、節に過(すぎ)ん事をおそれて、恣(ほしいいまま)にすべからず。心のちからを用ひざれば、欲にかちがたし。欲にかつには剛(ごう)を以(もつて)すべし。病を畏(おそ)るゝには怯(つたな)かるべし。つたなきとは臆病なるをいへり。

意訳

いつも、食べ過ぎて、薬を飲んでいたら胃が弱ります。このように悪循環を繰り返す人は、心が、いやしいため、義理を欠きます。しかし、人は好物の前では無力です。強い精神力がない場合、病気になったことを想像して憶病になりましょう。

通解

飲食は、飢えと渇きを満たすために摂るものであり、飢えや渇きがすっかり収まった後でも、食欲にむさぼることなく、贅沢に食べることは避けるべきです。飲食の欲望に翻弄される人は義理を欠く行動をとることになります。このような人々は、「口腹の人」と呼ばれます。
食べ過ぎた後に消化のために薬を使うことは避けるべきです。消化の過程で薬の効力と胃気が相まって生発の和気を妨げる可能性があるためです。自制心を持って、節制して飲食を行うべきです。好みのものや口に合うものを食べる際にも、まず心で自制し食べ過ぎないように気をつけるべきです。精神力を使うことで欲望に打ち勝つことができます。欲望を制するためには、剛毅な意志を持つべきです。病気を恐れましょう。

気づき

何事も、「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し」でしょうか。飽食の時代だからこそ、意志力が大切かも知れませんね。

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」=「何事もやり過ぎることは、やり足りないことと同じくらい良くない。」 度が過ぎたものは、足りないものと同様によくない。中庸が大切であることを例えている。中庸とは偏らず中正なことを指す。

口腹の人とは

「口腹の人(こうふくのひと)」は、一般的には食べることが好きで、食欲旺盛な人を指します。この表現は、特に美味しい食べ物に対して欲望が強い人や、食べることを楽しむことを重視する人を指す言葉です。

「口腹」とは、口と腹(胃)を指しており、食事に関する欲望や嗜好を表現しています。この表現は、食事や食べ物に対する好みや興味を指していて、その人が食に対して敏感であることを強調します。

ただし、文脈によっては、単に食欲旺盛なだけでなく、食べ物に執着が強すぎて他の重要なことを軽視しているような場合に、やや否定的に用いられることもあります。例えば、他の重要な仕事や問題に取り組むよりも、食べ物のことばかり気にしているといった状況の人を指す場合もあります。

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