養生訓149

飲食 上

人の身(み)は、元気を天地(てんち)にうけて生ずれ共、飲食の養なければ、元気うゑ(え)て命をたもちがたし。元気は生命の本(もと)也。飲食は生命の養(やしない)也。此故に、飲食の養は人生日用専一(じんせいにちようせんいち)の補(おぎない)にて、半日(はんじつ)もかきがたし。然(しか)れ共(ども)、飲食は人の大欲(たいよく)にして、口腹(こうふく)の好む処(ところ)也。其(その)このめるにまかせ、ほしゐまゝにすれば、節(せつ)に過(すぎ)て必(ず)脾胃(ひい)をやぶり、諸病(しょびょう)を生じ、命を失なふ。五臓(ごぞう)の初(はじめ)て生ずるは、腎(じん)を以(もって)本とす。生(しょ)じて後は脾胃を以(もって)五臓の本とす。飲食すれば、脾胃まづ是をうけて消化し、其(その)精液(せいえき)を臓腑(ぞうふ)におくる。臓腑(ぞうふ)の脾胃の養をうくる事、草木の土気(どき)によりて生長するが如し。是を以(もって)養生の道は先(まず)脾胃を調(ととのえ)るを要(よう)とす。脾胃(ひい)を調るは人身第一の保養(ほよう)也。古人(こじん)も飲食を節にして、その身を養ふといへり。

意訳

飲食は、命の源泉です。ですから、飲食を軽んじてはいけません。しかし、度が過ぎた偏食や過食は命を短くすることも多くあります。養生の道は、まず、飲食を整えることから始まります。

通解

人の身体は、元気を天地から受けて生まれ、飲食によって元気を保ちます。元気は生命の基本であり、飲食は生命を養うものです。そのため、飲食は日常の生活において最も重要な補給であり、半日も絶えず必要です。しかし、飲食は人間の大きな欲望であり、口と胃の好みに左右されることが多いです。これにまかせて欲しいものを食べると、節制を超えて脾胃を傷つけ、さまざまな病気を引き起こし、命を失うことにつながります。五臓の中で最初に生じるのは腎です。その後は脾胃が五臓の中心となります。飲食を摂ると、まず脾胃がそれを受けて消化し、そのエネルギーを臓腑に供給します。臓腑の脾胃の働きは、草木が土壌の栄養を受けて成長するのと同じです。そのため、養生の道はまず脾胃を調えることが重要です。脾胃を調整することは、人間の体の健康を保つための基本です。古代の人々も飲食を節制することで体を養うべきだと述べています。

気づき  

生活習慣病も、飲食の乱れにより悪化すると聞いたことがあります。飽食の時代だからこそ、食べるものを選びたいものですね。

飽食(ほうしょく)ー食べ物に不足がないこと、飽きるほどにたくさん食べられること。

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