養生訓136
養生の要訣一(ようけつひとつ)あり。要訣(ようけつ)とはかんようなる口伝(くでん)也。養生に志(こころざし)あらん人は、是をしりて守るべし。其(その)要訣は少(しょう)の一字なり。少とは萬の事(こと)皆すくなくして多くせざるを云。すべてつつまやかに、いはゞ、慾をすくなくするを云。慾とは耳目口体(じもくこうたい)のむさぼりこのむを云。酒食をこのみ、好色をこのむの類(るい)也。およそ慾多きのつもりは、身をそこなひ命を失なふ。慾をすくなくすれば、身をやしなひ命をのぶ。慾をすくなくするに、その目録(もくろく)十二あり。十二少(じゅうにしょう)と名づく。必ず是を守るべし。食を少くし、飲ものを少くし、五味(ごみ)の偏(へん)を少くし、色欲を少くし、言語(げんご)を少くし、事を少くし、怒(いかり)を少くし、憂(うれい)を少くし、悲(かなしみ)を少くし、思(おもい)を少くし、臥(ふす)事を少くすべし。かやうに事ごとに少すれば、元気へらず、脾腎(ひぞう)損せず。是寿(これじゅ)をたもつの道なり。十二にかぎらず、何事も身のわざと欲とをすくなくすべし。一時に気を多く用(もち)ひ過(すご)し、心を多く用ひ過さば、元気へり、病となりて命みじかし。物ごとに数多くはゞ広く用ゆべからず。数すくなく、はばせばきがよし。孫思(そんし)ばくが、千金方(せんきんほう)にも、養生の十二少(しょう)をいへり。其意(そのい)同じ。目録は是(これ)と同じからず。右にいへる十二少は、今の時宜(じき)にかなへるなり。
意訳
養生の要は、「少」の一字です。「少」とは、例えば、色欲を少なくし、酒食欲を少なくすることです。欲が多くなれば、無理や無駄が多くなり、短命のもとです。欲を少なくすれば、無理や無駄が無くなり、長寿になります。
通解
養生の要訣一(ようけつひとつ)あり。要訣(ようけつ)とはかんようなる口伝(くでん)也。養生に志(こころざし)あらん人は、是をしりて守るべし。其(その)要訣は少(しょう)の一字なり。少とは萬の事(こと)皆すくなくして多くせざるを云。すべてつつまやかに、いはゞ、慾をすくなくするを云。慾とは耳目口体(じもくこうたい)のむさぼりこのむを云。酒食をこのみ、好色をこのむの類(るい)也。およそ慾多きのつもりは、身をそこなひ命を失なふ。慾をすくなくすれば、身をやしなひ命をのぶ。慾をすくなくするに、その目録(もくろく)十二あり。十二少(じゅうにしょう)と名づく。必ず是を守るべし。食を少くし、飲ものを少くし、五味(ごみ)の偏(へん)を少くし、色欲を少くし、言語(げんご)を少くし、事を少くし、怒(いかり)を少くし、憂(うれい)を少くし、悲(かなしみ)を少くし、思(おもい)を少くし、臥(ふす)事を少くすべし。かやうに事ごとに少すれば、元気へらず、脾腎(ひぞう)損せず。是寿(これじゅ)をたもつの道なり。十二にかぎらず、何事も身のわざと欲とをすくなくすべし。一時に気を多く用(もち)ひ過(すご)し、心を多く用ひ過さば、元気へり、病となりて命みじかし。物ごとに数多くはゞ広く用ゆべからず。数すくなく、はばせばきがよし。孫思(そんし)ばくが、千金方(せんきんほう)にも、養生の十二少(しょう)をいへり。其意(そのい)同じ。目録は是(これ)と同じからず。右にいへる十二少は、今の時宜(じき)にかなへるなり。現代文養生の要訣はひとつあります。要訣とは、厳重に守るべき教えや伝えです。養生を志す人は、これを知って守るべきです。この要訣は一字で示されます。その一字とは「少」です。この「少」とは、万事を無駄なく行い、少なくても十分であることを指します。すべて簡素にすることで、慾望を少なくすることを意味します。ここでの「慾」とは、耳・目・口・体の欲望を指します。酒や食べ物の欲望、好色の欲望などです。慾望が多いと、体を傷つけ、命を失うことがあります。慾望を抑えれば、体を害することなく命を長らえることができます。
慾望を少なくするためには、以下の十二の目録を守る必要があります。これを「十二少」と呼びます。必ずこれを守るべきです。食べ物を少なくし、飲み物を少なくし、五味の偏りを少なくし、色欲を少なくし、言葉を少なくし、行動を少なくし、怒りを少なくし、憂いを少なくし、悲しみを少なくし、思いを少なくし、寝ることを少なくすべきです。これに従って少しずつ行動することで、元気を保ち、脾臓と腎臓を損ねずに済みます。これが長寿を保つための道です。十二だけでなく、どんなことでも、身の行動と欲望を少なくするべきです。一度に多くのことをしようとせず、心を広げすぎないようにすることが良いです。孫思邈(そんしはく)も「千金方」で同様の教えを述べています。その意味は同じです。目録とは同じではありません。この「十二少」は、現代にも適用できることです。
気づき
適当という言葉があります。テレビで有名なコメディアンで俳優でもある方がテキトー男って呼ばれているそうです。
適当の本来の意味は、ある性質・状態・要求などに、ちょうどよく合うこと。度合がちょうどよいことだそうです。
私も、適当男になりたいものですね。
要訣 (ようけつ)=物事の最も大切なところ。