養生訓135

七情(しちじょう)は喜怒哀楽愛悪慾(きどあいらくあいあくよく)也。医家(いか)にては喜怒憂思悲恐驚(きどいうしひきょうきょう)と云。又、六慾あり、耳目口鼻身意(じもくこうびしんい)の慾也。七情(しちじょう)の内、怒(ど)と慾との二(ふたつ)、尤徳(もっともとく)をやぶり、生(せい)をそこなふ。忿(いかり)を懲(ちょう)し、慾を塞(ふさ)ぐは易(えき)の戒(かい)なり。忿は陽に属(ぞく)す。火のもゆるが如し。人の心を乱し、元気をそこなふは忿なり。おさえて忍ぶべし。慾は陰に属す。水の深きが如し。人の心をおぼらし、元気をへらすは慾也。思ひてふさぐべし。

意訳

怒りは、自分も、相手も、心を傷つけ、元気を損ないます。このことは、古い経にも書いてあります。そして、欲が深すぎても、人心を惑わせ、元気を減らす原因になります。

通解

七情とは、喜怒哀楽愛悪慾のことです。医学の分野では、喜怒憂思悲恐驚のことを指します。また、六慾とは耳・目・口・鼻・身・意の慾望です。七情の中でも怒りと慾望は、特に徳を崩し、健康を害する要因となります。怒りを抑え、慾望を押さえることは、病を防ぐための大切な教訓です。怒りは陽に関連し、火のようなものです。人々の心を乱し、健康を害するのは怒りです。その怒りを抑えて忍耐することが大切です。慾望は陰に関連し、水の深さのようなものです。人々の心を欺き、健康を損なうのは慾望です。慾望を制御するためには、思いを抑えることが重要です。

気づき

「烈火の如く怒る」と言いますね。怒りは火の燃ゆるが如しなのでしょうか。そういえば、顔も赤くなりますね。身体に悪いのは当然かも知れません。烈火とは、激しい勢いでもえる火。烈火のごとく怒るとは、非常に激しく怒るさま。


養生訓

前の記事

養生訓134
養生訓

次の記事

養生訓136